映画「ルックバック」
興行収入10億円突破と聞いて驚いた。
確かに原作が藤本タツキだし、話題性だってある。
でも上映時間1時間弱、一律¥1,700で入場特典があるわけじゃない。
そこまでのヒットは望めないのでは・・・?と思っていた。
でも実際見たら、原作を読んで内容を知っていたにも関わらず号泣した。
思い出して泣き、思い出して泣き。
絵に声が乗り、動きがつくだけで容易く感情が持っていかれる。
学生新聞で4コマ漫画を連載し、クラスメイトからも称賛されている小学4年生の藤野。そんなある日、先生から、同学年の不登校の生徒・京本の描いた4コマ漫画を新聞に載せたいと告げられる。自分の才能に自信を抱く藤野と、引きこもりで学校にも来られない京本。しかし京本の絵の才能に敗北感を感じた藤野は漫画を描く事を辞めてしまう。卒業式の日、先生から頼まれて京本の家に卒業証書を届けに行った藤本。
そこで2人は初めて会うことになるのだが、京本は藤本の事を「先生」と呼び、ずっと藤本の描く4コマ漫画のファンだったと告げる。
敵わないと思っていた相手から自分のファンだったと言われた藤本は自信を取り戻し、京本と2人で漫画を描き始める。
高校生で漫画大賞を受賞した2人は賞金を手にし、一緒に町へ出かける。
京本にとっては恐怖であった外の世界。
しかし藤野が差し出した手を掴み、まばゆい光の差す世界へ一歩踏み出す京本。
それまで体験した事がない青春を味わうことになる。
特にこの一緒にクレープを食べるシーンが一番好きだ。
その後読み切りが何作か掲載され、連載の話がきた時に京本は美術系の大学へ進学したいから手伝えない事を伝える。
それまで2人でずっと一緒に作品を作り上げ、お互いの才能を認め合い、支え合ってきたから藤野には京本の気持ちが理解できない。
しかし京本はきっと、藤野の為にも自分の為にももっともっと上手に描けるようになりたかったのだろう。
背景画の専門家になるという新しい夢ができたのではないだろうか。
2人はそれぞれの道へ進み、藤野は連載を開始し、確実に部数を伸ばしていく。
そんな時、京本が通う大学で起きた無差別殺人事件で京本は命を落とす。
自分が小学6年生のあの時、京本を部屋から出さなければ死なせずに済んだのに・・・と自分を責める藤野。
しかしあの時部屋を出なければ、生きながら死んでいるような生活だっただろう。
部屋から出たお陰で、それまで出来なかった様々な事が体験できた。
新たな夢もできた。
どちらが良いかは分からないが、京本は部屋を出てからの何年間かを自ら生きた。
「生きる喜び」を実感した数年間だったと思う。
そして藤野は描き続ける。京本の分も。変わらずに。
シンプルで切なく儚い青春の1ページが、田舎町の雪を踏みしめる音と同じくリアルに迫ってくる。
原作へのリスペクトを感じる、素晴らしい映画でした。
最後に、藤本の声を演じた河合優実さんも京本役の吉田美月喜さんも本当に素晴らしくて感動した。
何度でも見たい映画。
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